まだ終わっていませんが暑さ厳しかったこの夏。
皆さんは浴衣や夏着物を着られましたか?
そろそろ8月も終わり浴衣をクリーニングに出そうかな?と思っている方もおられると思います。
浴衣は「綿」なのでコットンワンピースのようにご家庭で洗濯ができますが、布の分量が大きいのでちょっと面倒と思われるかもしれませんね!
この記事では日々浴衣や夏は洗える自然素材(綿麻、麻、リネン)を愛用、クリーニングには出さずに家庭洗濯しているきもの講師が日頃やっている方法をご紹介。一例としてご参考になさっていただければと思います。
\こんな方へ/
🔶クリーニング代を節約したい
🔶着るごとに都度洗ってさっぱりして着たい
🔶浴衣だけでなく木綿、綿麻、麻、リネン等のシワが気になるきものも家で洗いたい
🔶なるべくアイロンをかけずに楽したい
🔶使う洗剤や洗濯のアイテムが知りたい
では始めます!
知っておくとよい浴衣の洗濯の流れ
洗う前に、知っておくとよい流れ、ポイントです。
🔶下準備(素材チェック、色分け、衿とじ、下洗いなど)
🔶便利アイテム(持っておくといい洗濯ネット)
🔶洗剤えらび(洗剤、柔軟剤、洗濯のりなど)
🔶洗い方(洗濯機、手洗い)
🔶干し方(時間、竿、ハンガー)
🔶シワの取り方(寝押しとアイロン)
では順にご紹介していきましょう。
浴衣の洗濯の下準備と下洗い
素材で分ける
浴衣は基本「綿」のものが多いですが、最近は「洗える浴衣」(←この呼び名も違和感はありますが(笑))と称して「ポリエステル100%」のシワにならないものもあります。もしポリエステルであれば大きな洗濯ネットに入れてポリエステルのワンピースと同じように洗濯機洗いして大丈夫。シワもできずサッと乾きます。綿や綿麻の場合はこれから書いていく手順でどうぞ👍
色で分ける
白地、濃色は分けた洗った方が安全です。昔ながらの藍染めの浴衣(白×紺等)はまだまだ色が出るものもあり、逆に現代もののプリント浴衣も海外製の安価なものなど品質によっては色移りするものがあります。レンタル店で仕事をしていたときそこそこ上等な既製品浴衣でも色移りしてしまったことがあります。心配なときはそれ1枚単独で洗いましょう。
衿とじをする(必要に応じて)
衿の内側には布がたたみ込まれて作られています。仕立てによっては洗濯の刺激で布が動いてゴロゴロになることがあるので、衿をざくざく縫っておくとよいです。私はしていないですが今のところ大丈夫です。既製品の浴衣はそもそも衿が簡易構造になっていて布が入っていないこともあるのでしなくてよいと思います。(簡易の仕立てがいいというわけではなく、これが既製品浴衣の衿が決まらない、落ち着かない理由でもあるのでこのお話しはまたいつか。)
下洗い(必要に応じて)
一番汚れている部分は衿と袖口。食べこぼし等、汚れのひどい部分は先に洗っておきましょう。シャツの衿よごれを先に洗うイメージです。
目立つ汚れがなければしなくてOKです!
便利アイテム(持っておくといい洗濯ネット)
あると便利で、意外にご存じない方が多いのが通称:「スラックス用洗濯ネット」です。長細くたたんだものをくずれず洗うための洗濯ネットです。
きもの用の洗濯ネットもありますが私はパンツやワンピース等を洗う時にも使いたいので、あえてスラックス用のネットをきものとの併用で使っています。
日々の洗濯が格段楽になります。絶対!持っておくとよいですよ~。大体1000円前後です。
きもの用洗濯ネットもあり1300円前後と少し割高な分、裾までネットの幅が広かったり、衿が固定されるようクッション部分があるなど工夫されています。パンツを洗う時にはこのクッションは不要なので、どちらがいいかはどうぞお好みで。
洗剤選び(洗剤、柔軟剤、洗濯のりなど)
洗剤選び
漂白、蛍光剤の入っていない中性洗剤はおすすめです。アタックゼロのようなものからウールやおしゃれ着用のアクロン、エマールなども漂白剤の入っていない中性洗剤ですし、先に書いたウタマロリキッドも中性です。(私はウタマロリキッドで部分洗いしたあと少量で全体洗いにも使うのでほぼこれ1本。)
環境や香害配慮をされる方は石鹸系の洗濯洗剤もよいと思いますが、注意したいのは藍染めの浴衣。石鹸成分(アルカリ)が入っていると色落ちが激しくなりますので中性洗剤かどうかを成分欄をよく読んでお選びください。(逆に石鹸成分で藍は落ちますので、藍が色移りした別のものは石鹸で洗うとよく落ちます)
ソネットは環境配慮型の洗剤で愛用者も多いと思います。石鹸成分も入っているのでPHは弱アルカリなのか調整剤が入っているので中性なのか(はっきり記載がなくて不明)、私はまだ藍染の浴衣に使ったことがないので色落ち度合いが検証できていませんがまた使ってみますね!
柔軟剤は?
浴衣はパリッとした質感が涼しさのもとなので使わないでいいかなと思って使っていません。使わなくても不都合ないですよ!
洗濯のりは?
のりの役目は「着たときにパリっ」と肌にまとわりつかない素材感を出すことです。洗濯のりを溶かした水につけてから脱水したり、スプレー式の洗濯のりをしてアイロンをかけるなどでかけますが、私は使っていません。肩が張っているので(笑)袖が浮き上がって大きく見えるのが嫌で落ち感がある方が好みだからです。
もし数年着ないかもしれない浴衣の場合はのりをして仕舞うのはNGです。のりの成分が残りすぎてシミになる心配もあります。のりは保管のためでなく着用感のため。もし使うならシーズンになて着る前にシワ取りかねてスプレー式ののりをしてアイロンをかけるとよいと思います。
洗い方(洗濯機、手洗い)
洗濯機洗いと手洗い
丁寧にしたいなら手洗い、簡単にしたいなら洗濯機洗い。私は楽してほぼ洗濯機洗いです。
手洗いの場合も先にご紹介の洗濯ネットを使うとくずれずにとても楽!使わないと水を吸った浴衣は重くて余分な力を布にかけてしまう恐れもあるのでぜひ使ってみてくださいね。
洗濯機で浴衣を洗う
ここでは洗濯機洗いをご紹介していきますね。部分汚れがある場合は先ほどの下洗いを先に。汚れがなければそのままでスラックス用(きもの用)洗濯ネットに本だたみした浴衣をはさみ、袋に入る幅にたたんでいきます。画像では下からくるくるたたんでいますが、先に半折りしてからたたみ込んだ方がネットの中で崩れにくい気がしますよ!
袋に入れて、ファスナーを閉めたら袋の状態で水(または少し洗剤を溶かした水)に浸して中までしっかり湿らせます ※大事!
手洗いする場合はこの状態で押し洗いすればOKです。
洗濯機に洗剤を入れ(いつもより少な目でOK)セット。洗い時間は汚れ度合いによって加減します。私は数分~5分です。すすぎはしっかり洗剤を落としておきたいのでここでは注水で2回にしていますが、長く洗うほど布を傷めますので1回にすることも。脱水は短く数十秒でいいのですがセットできないのでここでは1分にしています。ご自身でも加減してみてくださいね。
袋から取り出したところです。画像はリネンカラーきもの(麻)の洗い終わりです。シワがつきやすいリネンでもこのネットを使えば中でくずれず安心です!
干し方(時間、竿、ハンガー)
直射日光に当たらないよう陰干し
外なら直射日光の当たらない時間帯、場所で。ヤケで色が変わるのを防ぐためです。夜に洗ってもよいですね。
心配な場合は室内のほうが長く干してしまっても安心です。
ものほし竿が一番楽
一番楽なのはものほし竿に通す方法。場所がないときは竿に半身に畳んだまま干したりきものハンガーも使いますが私は基本はものほし竿です。
縫い目やシワを整える
一番つりやすい縫い目は下に引っ張り整えます。丁寧にする場合は洗う前に袖丈や身丈を測っておき元の寸法まで引っ張って整えるとなおよいです。
シワもパンパンとたたくなどして取っていきます。濡れた状態で先にシワや縫い目にアイロンをかけてもいいのですが面倒なので私はしません(笑)
肩山、袖山が竿の真上にくるように衿を倒して干すとよいと思います。
場所がないときは半身にたたんでこんな風に干すことも。袖に洗濯ばさみの跡がつくので気にならない浴衣でお試しください。内側は乾きにくいので本当は広げるのが一番いいのですけどね。
きものハンガーは袖が折れないよう注意
ハンガーの棒が袖の先まであればよいのですが、袖の途中で終わってしまうと袖に癖がついてしまいます。肩と袖の間の縫い代のところに棒の端が来るように工夫して干すとよいと思います。
小一時間ほどで半乾きまで
外で干す場合は1時間~2時間ほどで半乾きまでにし室内に取り込みます。取り込んだときには袖もほぼ乾いているはずなのできものハンガーや洋服用のハンガーにかけてしまっても大丈夫です。 私は面倒なのでこの後室内で完全に乾かしていますが、半乾きの状態でアイロンや寝押し(次の手順)をした方がシワが取りやすいです。
シワの取り方(寝押しとアイロン)
絞りの浴衣、縮(ちぢみ)はノーアイロン!
絞りやちぢみなど、凹凸のある素材の浴衣や夏きものはアイロンはしません。せっかくの絞りやシボがつぶれてしまい、寸法も伸びてしまうからです。
逆にいうとアイロン不要でシワも気にならずメンテナンスフリー!絞りの浴衣は高価なので家庭洗濯なんて怖い~と思う方も多そうですが逆に着物に慣れていないクリーニング店だとアイロンで伸ばし切ってしまわれたという話も聞いたことがあり私は家でしか洗ったことはありません。
寝押しが一番
ベッドの方も多いと思うので「寝押し」をした経験がない方も多いかも?寝押しとは文字通りきものの上に布団を敷いて寝てプレスすることですが、布団でなくても大丈夫。新聞やたとう紙にはさみ、上から座布団などを置くとよいです。寝押しによって布が重なった縫い目に一番圧がかかることで縫い目、折り目が整いシャンとします。
アイロンがけは部分で
寝押しをしておけば縫い目はアイロンがけはほぼ不要。気になる部分があればそこだけかければよいですね。
アイロンをしたい場合は木綿、麻系の素材は霧吹きでしめらせて高温でかけます。テカらないように当て布をした方がいいですが、十分湿らせてアイロンをごしごし動かさなければテカリませんので、私はいつも当て布なしでサッと部分だけかけています。
浴衣の片づけ
さっぱり洗ったらお片付け。この機会に箪笥にある浴衣、きものの状態を見ておくのもよいと思います。
たとう紙の劣化に注意
もしたとう紙が古くなって茶色く変色していたりシミが浮き出ている場合は使わずに破棄して交換しましょう!シミや見えないカビなどが布に移って悪さをしてしまいます。私は浴衣はたとう紙に入れずに本だたみしてから三つ折りにして重ねて箪笥に入れています。きもの、浴衣というと特別に聞こえますが、言ってみればきものの形をした綿のワンピースですからね!気軽に考えても大丈夫です。もし次着る時にシワが気になればそこだけ霧吹き→アイロンを軽くすれば大丈夫です。
自分で洗える浴衣のための仕立てのコツ
今回は洗濯機洗いをメインにご紹介してきましたが、少し注意しておきたいことを。
洋服もそうですが綿、麻は水洗いすると縮む素材ということ。仕立てるときに気を使っておくとよいポイントがあります。
水通しを必ずしてテンションをかけずに整理してもらう
反物の状態で水に浸して十分縮めてしまうことです。自分でもできますが、反物は12m前後と長いので結構大変。お店でも2000円~とさほどかかりませんのでお願いした方が楽かも。水通しをした後にテンションをかけて(引っ張って)反物に巻きなおしてしまうとせっかく縮んだものがまた伸ばされるので水通しの意味がなくなります。「この浴衣は家庭洗濯するので反物は縮めきってください」としっかり伝えておくとよいですね。私は水通しをお願いしたのにこれが原因で洗ってものすごく縮んだ経験があります。きもの店であってもこういうケースは珍しくなく、あり得るお話。先によくよく伝えておくとよいです。
手縫いかミシン縫いか
まとったときに体に柔軟にそい着心地がよいのが手縫い。ほどきやすく寸法直しや洗い張りもしやすいです。
ミシン縫いは背縫いなど力がかかる部分が丈夫なので洗濯機でガンガン洗う場合はミシン縫いがいいという方もおられます。
また、ほどきにくく、またほどいたとしても布に縫い目の穴がしっかり残るので寸法直しなどの場合はそこが目立つことがあります。
個人的には上等な大事な浴衣は手縫いと決めています。そして洗濯機でも洗っています。先の洗濯ネットを使えば布に負担がかからないので全く問題なしです!
仕立て代をおさえたい時、自分が着倒すと決めたものはミシン縫いと手縫い併用に。袖口や袖の振り、裾など見える部分にミシン目が出ると安っぽいので見える部分はくけてあるほうが好きだからです。
洗って縮んでしまったら?
リサイクルやおさがりで水通しして仕立てたのかわからない浴衣もあるかと思います。もし洗って縮んでしまったら、脱水後すぐ濡れた状態で引っ張りながらアイロンをかけていくとかなり元に戻ります。私はこの方法で元160㎝が150㎝近くに縮んだ浴衣を156㎝程まで身丈を戻せました。袖丈も45㎝→48cm位にはできました。ただうまくかけていかないと生地が波打ったりゆがむので注意は必要です!慎重に~
ちなみに丈は大きく縮みやすいですが幅は縮みにくいです。最近の既製品浴衣は広幅の生地を布目の方向がまちまちに仕立てられている場合もあって、洗ってゆがむものもあります。そんな時は・・・安いものを買ってしまったな~仕方ない~とあきらめるしかないとは思います。反物から仕立てる昔ながらの手仕事の浴衣、やっぱり良いものはよいのです。
いかがでしたか?夏活躍してくれた浴衣や夏着物、ご自身の手で綺麗にメンテナンスしてまた来年も楽しんでいただけたら嬉しいです。
8月ももう末になってきました。今年の浴衣レッスンは一応8月いっぱいご予約受付しています。(ご希望あれば9月もOK)
着方だけでなくきものまわりのいろいろもレッスンや講座、ブログなどでお伝えしています。
よろしければまたお声がけしてくださいね!